どんなお仕事? 小規模多機能施設スタッフの1日
はじめに | 小規模多機能型居宅介護とは?
小規模多機能型居宅介護とは、地域密着型サービスに分類されている介護保険サービスのひとつのことで、介護業界関係者の間では「小多機」と略して呼ばれることが多いです。(以後、小多機と表記。) 小多機の役割を簡単にまとめると、高齢者が介護を必要とする状態になっても、住み慣れた自宅や地域で暮らし続けることができるようにサポートをすることです。
サポートの内容は、自宅から小多機の事業所へ一時あずかりをする「通い」を中心に、短期間の「宿泊」、ご利用者の自宅への「訪問」となります。
「通い・宿泊・訪問」という言葉に聞きなれていない方は「デイサービス・ショートステイ・ホームヘルプサービス」と言い換えるとわかりやすいかもしれません。
小多機ではこれら3つのサービスを柔軟に組み合わせながらひとつの事業所で提供をしているという特徴があります。
どういった人が小多機を利用しているの?
小多機では要介護認定を受けた方が利用をしています。
特別養護老人ホームのように要介護度3以上の方が利用できるといった介護度による利用の制限はありません。
要支援1・2、要介護1~5に認定されていればだれでも利用が可能です。
実際に小多機を利用している方の介護度の割合を厚生労働省の資料(「令和元年度介護給付費等実態統計報告」)で見てみると、要支援1・2、要介護1・2の方が約61%を占めています。
介護度が軽いから支援が少なくてすむとは簡単に言えないところがあるのですが、介護度が軽い方が利用の中心となっていると言えるでしょう。
小多機の1日のスケジュール
小多機で働く介護スタッフの1日を日勤と夜勤に分け、時間ごとにどのような仕事をしているのかを紹介しているので参考にしてみてください。
日勤の場合
9:00 | 出勤 夜勤スタッフからご利用者の夜間の様子や業務について申し送りをうけ仕事を引き継ぐ |
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9:30 | 「通い」を利用するご利用者を自宅へ迎えに行く |
10:00 | 事業所へ来たご利用者の血圧や体温などを測定し体調を確認 |
10:30 | ご利用者の入浴介助 |
11:30 | 昼食の準備 ※事業所によっては介護スタッフが調理をすることもあります。 |
11:50 | 食前に口腔機能を高める体操をする 感染症を予防するため手洗いや手指を消毒 |
12:00 | 昼食 ※ご利用者の食べる能力に合わせ噛みやすいものや飲み込みやすいものなどに配慮しながら個別に用意します。 支援が必要な方への食事介助や見守り 服薬の介助 昼食後の口腔ケア(歯みがき・義歯の洗浄・うがいなど) |
13:00 | スタッフの休憩 ※スタッフは12:00頃からその日のご利用者の状態に合わせつつ交代で休憩をとることが多いです。 |
14:30 | レクリエーション ※ご利用者の心身の状態を高めることができるような内容のレクリエーションを 楽しみながら取り組めるようにメニューを考えサポートをします。 |
15:00 | おやつ |
16:00 | 「通い」を利用したご利用者を自宅へ送る |
17:00 | 夜勤スタッフへご利用者の日中の様子や業務などの仕事を引き継ぐ 夕食の準備 事業所の掃除 ※事業所内の手すりやドアノブ、トイレやテーブル、使用した物品などの消毒を行います。 |
18:00 | 退勤 |
その他
- 随時、次のような内容のことも行っています。
- ご利用者の排せつ介助
- あらかじめ決められた時間、もしくは随時ご利用者の自宅へ「訪問」し介護サービスを提供
※訪問の回数や内容は事業所によって異なります。 - ご利用者の様子や行った介護内容を記録する
など
夜勤の場合
17:00 | 出勤 日勤スタッフからご利用者の日中の様子や業務などの仕事を引き継ぐ |
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17:30 | 夕食の準備 |
18:00 | 夕食 食事の介助や見守り 服薬の介助 夕食後の口腔ケア |
20:00 | 就寝の介助 排せつ介助 居室への移動介助 パジャマなどの寝間着への着替え介助 眠前薬の服薬介助 |
21:00 | 消灯 |
その他
- 随時、次のような内容のことも行っています。
- 定期的に居室へ訪室してご利用者の安否や状態を確認
- 眠れないご利用者の見守り
- 排せつ介助
- ご利用者の様子や行った介護内容を記録する
など
6:00 | 起床の介助 寝間着から普段着への着替え介助 排せつ介助 洗顔や整髪など身だしなみを整える介助、など |
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7:00 | 朝食の準備 |
7:30 | 朝食 食事の介助や見守り 服薬の介助 朝食後の口腔ケア |
8:30 | 日勤スタッフへご利用者の日中の様子や業務などの仕事を引き継ぐ |
9:00 | 退勤 |
小多機の特徴とは?
働くスタッフの目線で考えてみた時に、いくつかメリットやデメリットはあります。
その中でも特徴的なのがご利用者の生活全般を柔軟にサポートすることです。
他の在宅系の介護サービスと比較するとよくわかるのですが、デイサービスであれば日中に決められた事業所内でのサポートとなりますし、ホームヘルプサービスであれば自宅での定められた時間と内容のなかでのサービスの提供となります。
一方、小多機ではこれらをご利用者のニーズや状態にあわせてきめ細かく柔軟に組み合わせて行うことができます。時間や頻度、サービスの内容はご利用者ごとに決めることができるのです。
ご利用者の生活全般を柔軟にサポートする働き方がしたいという希望をもっている方にとっては、自身の思う働き方を叶えやすいというメリットがあると言えるでしょう。
一方で、このメリットはデメリットにもなりえます。
生活全般の支援はとても業務の範囲が広く、自分が苦手とする分野のサポートをしないといけない可能性が十分にあります。
自身の望む働き方や得意分野を活かしやすい環境ではあるのですが、望まないことや苦手なことも行わなければいけない可能性があることを理解しておきましょう。
小多機の業務で気をつけたいこと
小多機で働く際に気をつけたい点はいくつかあるのですが、特に気をつけたい点を紹介するので参考にしてみてください。
ご利用者の安否確認
ご利用者の安否確認はどの介護サービスでも重要なことですが、小多機は他の在宅系のサービスとは異なり生活全般をサポートすることから、安否確認をする頻度が高くなりやすいと言えます。
通いの時間、訪問の時間、泊りの時間はもちろんのこと、ご利用者に関わっていない時間のこともしっかりと想定し日々のサポートを組み立てていく必要があります。
これらの組み立てはケアマネジャーのする仕事ではあるのですが、組み立てるためには実際にご利用者のサポートにあたる介護スタッフの気づきが欠かせません。常にご利用者の行動にアンテナを立てておくように気をつけておくことは大切だと言えるでしょう。
ご利用者のプライバシー
小多機は「通い・泊り・訪問」と生活全般のサポートをすることからご利用者と接する機会も多くなりやすいと言えます。それ自体は悪いことではないのですが、ご利用者の心身の状態によっては人に見られたくない部分や関わってほしくないことに関わるケースも少なくありません。
そういった部分を意識しながら、いかにご利用者のプライバシーを保つことができるようサポートをするのか考える必要があります。
認知症の方のサポート
特に大変なことのひとつに、一人暮らしで認知症を患った方のサポートがあります。認知症の症状や程度にもよりますが、多くの支援が必要となるケースが目立ちます。
例えば、認知症の症状でよくある「物忘れ」のあるご利用者であれば、薬の服薬確認・食材の管理・排せつの介助・清潔の保持・自宅内の清掃・所在の確認・心のケアなどのサポートが必要となってくることが少なくありません。
常にスタッフの目が届く施設系の介護サービスとは異なるので、いかにご利用者の状態や特徴を日々のサポートから掴みつつ分析しサポートするのかが大切になってきます。
おわりに
小多機の役割と仕事の流れやそのポイントについて紹介をしてきましたが、大まかなイメージはできたのではないでしょうか。
小多機は他の介護サービスにはない独特のシステムであることから働き手にとって大変さのあるサービスという一面があります。一方で、他のサービスにはない柔軟さから大きなやりがいを得やすいとも言えます。
こういった点を踏まえたうえで、小多機についてより興味を持っていただけたら幸いです。
【参考サイト】
有田 和弘
介護の現場で介護スタッフ・介護支援専門員として10年以上の経験を積む。
現在は小規模多機能型居宅介護施設で介護支援専門員として高齢者の生活支援に携わりながら、介護に関する記事を書くライターとしても活動中。