在宅介護での活躍が期待されるシステムによる 見守りサービスについて知ろう
超高齢社会を迎えた日本では、介護を必要としながらも自宅で暮らす高齢者が年々増加しています。一方、子供世代との同居率は減少しており、遠く離れた家族をどうやって見守るかが大きな課題となっています。そこで注目されているのが、システムによる見守りサービスです。この記事では、在宅介護での活躍が期待されるシステムによる見守りサービスについて、詳しく見ていきましょう。
自宅で生活する高齢者を取り巻く現状とは
システムによる見守りを考える前に、自宅で生活する高齢者を取り巻く現状を整理しておきましょう。今問題となっているのは、高齢者の孤立と新型コロナウイルスの感染拡大です。
社会から弧立する高齢者の増加
令和元年度高齢社会白書によると、65歳以上の世帯のうち約半数は、一人暮らしもしくは高齢者だけの世帯です。特に、一人暮らしの高齢者は年々増加しており、2020年には700万人を突破すると考えられています。今後もこの傾向は続くと考えられ、2040年には900万人に迫る勢いとなるでしょう。
また、一人暮らしをしている高齢者は、家族と同居する高齢者に比べ、社会交流が少なく生活満足度が低くなりがちです。特に、都市部に暮らす高齢者や男性の場合、友人や近所の人との関係性が薄くなっています。そのため、一人暮らしの高齢者が増えるほど、社会から孤立する高齢者も増加すると考えられるでしょう。
新型コロナウイルスによる孤立
今年は新型コロナウイルス感染の影響により、県境をまたぐ移動が自粛となりました。その結果、県外在住の家族が帰省できない高齢者増加しています。近距離に住む家族でも、感染を避けるため最低限の訪問となり、思うように本人を支援できない状況が続いているのが現状です。
また、感染拡大予防の観点から、訪問サービスや通所サービスが利用休止となったケースもみられました。家族も訪問できず、介護サービスも利用できない。そのような状況が続いたことで、急に社会から孤立してしまう高齢者も出てきています。
自宅で生活する高齢者が抱える3つの課題
2020年はこれまでと違い、新型コロナウイルスによって高齢者を取り巻く環境が大きく変わりました。特に、自宅で生活する高齢者には、次の3つの課題が降りかかる状況となっています。
気持ちの落ち込みと生活リズムの変化
新型コロナウイルスの流行は、高齢者の生活に大きな変化をもたらしました。人が集まる場への外出が規制されたことにより、趣味活動の場やデイサービスなどの介護サービスが一時的に利用できなくなりました。また、県境をまたいだ移動の自粛が求められたことで、県外に住む家族の帰省もできなくなっています。近くに住んでいる家族が見守りを行っていたところでも、感染予防のため訪問時間を最低限にした人が多く、高齢者が社会交流を行う機会が激減しました。
このような状況が長くなってきたことで、体調を崩してしまう人や、認知症状が急激に進む人が出てきました。この背景には、外出規制により日々の楽しみがなくなり気持ちが落ち込んでしまったり、一日中家にいることで生活のリズムが狂ってしまったことが影響していると考えられます。
本人と家族の双方が不安な生活を強いられる
家族や介護サービスによる見守りが減ってしまうことは、家族だけでなく本人にも大きな不安を与えます。「誰かが定期的に訪問してくれる」ということ自体が、本人の安心につながっている例もあります。見守りたくても見守れない家族にとっても、本人の様子を知る機会が減ったことによる不安は大きいと考えられるでしょう。
社会と交流する機会が減少する
新型コロナウイルス感染対策では、介護サービスだけでなく、趣味活動やボランティア活動などの場も、活動中止に追い込まれました。このことにより、介護を必要としていない高齢者も社会交流の機会を失うこととなりました。また、感染を恐れるあまり必要な病院受診を控える人も出てきており、その結果病状を悪化させてしまった例もあります。
自宅で生活する高齢者の不安を軽減する見守りシステムの活用
新型コロナウイルスの影響により、直接見守れない家族の「離れていても見守りたい」という思い。そんな思いを叶える方法のひとつとして活用したいのが、システムによる見守りサービスです。見守りシステムの活用には、主に3つのメリットがあります。
離れていても利用者の状況を確認できる
見守りシステムは、カメラやセンサーなどで利用者の状況を確認します。システム利用中のデータは一定期間保存されるため、仕事から帰った後や夜中の様子なども把握できます。本人の動きだけでなく、居室の温度や湿度などがわかるもの、睡眠状況を記録するものなどもあり、健康状況を知るために利用する人もいます。
「家族に見守られている」という安心感を与えられる
見守りシステムを導入することで、「家族が遠く離れていても見守ってくれている」といった安心感が与えられます。特に、このコロナ禍においては、病気になることの不安も強くなっているため、見守りシステムがあることで気持ちが落ち着くという人もいます。
人を介すサービスと活用すれば社会交流の機会を増やせる
見守りシステムと人を介したサービスを併用すると、人と交流する機会を得ることができます。山形県の一部地域では、「オーラでまもる~の」という人による家事援助サービスと見守りシステムをセットにしたサービスが始まりました。
見守りシステムと人を介したサービスを利用すると、システムではわからない小さな変化に気付けるかもしれません。例えば、ゴミの分別がうまくできなくなってきた、郵便物や書類がそのままにしてある、と言った状況は、見守りシステムでは感知できない部分です。人が介入することで気付ける異変であり、家族と連携することで小さな異変でも早めの対応が可能となるでしょう。
見守りシステムの今後の活躍に期待
地域包括ケアシステムといった大きな取り組みが進められる中で、自宅で暮らす高齢者はこれからも増えていくことでしょう。同時に、75歳以上の後期高齢者数も増加すると試算されていくなど、高齢者を取り巻く環境はどんどん変わっていきます。
このような目まぐるしい状況の中、見守りシステムが果たす役割は、今後ますます大きくなっていくことが予想されます。今後は、見守りシステムだけでなく、人によるサービスによる組み合わせによって、利用者や家族のニーズに合わせた柔軟な対応を求められていくでしょう。
また、見守りシステム自体も、今後ますます多様化していきます。まずは、多様化するシステムの情報を積極的に取り入れ、どんな見守りシステムがあるかを知っていくことが大切です。
【参考サイト】
中村 楓
介護職として十数年のキャリアを継続しながら、介護の世界をより良いものに変えていきたいという夢を持つ介護福祉士です。
介護専門ライターとして、介護に関わる記事を多数執筆してきました。