認知症のご利用者様とのコミュニケーションってどうしたらいいの?
ご家族も参考になる!認知症の種類別コミュニケーション方法

認知症のご利用者様とのコミュニケーションってどうしたらいいの?  ご家族も参考になる!認知症の種類別コミュニケーション方法

はじめに

認知症にはいくつかの種類があり、症状や対応法が異なります。

では、私たち介護スタッフは、認知症の種類・特徴によって、どのようにコミュニケーションの方法・内容を工夫すれば良いのでしょうか?

この記事では、主に高齢者が抱えがちな認知症の種類や主な症状を紹介するとともに、それぞれの症状に合わせたコミュニケーション方法を解説します。
認知症のご利用者やご家族との関わりの中で是非活用してみてください。

それぞれの認知症の詳しい解説は下記の記事を参考にしてみてください。

もっと詳しく認知症について知りたい方はこちら!

高齢者の5人に1人が認知症に!?
高齢期にかかりやすい認知症の種類や予防策について知っておこう!

アルツハイマー型認知症の場合

アルツハイマー型認知症の概要

認知症のなかで最も罹患者数が多く、厚生労働省の「認知症施策の総合的な推進について」によると、全体の67.6%を占めるのがアルツハイマー型認知症です
「アルツハイマー」という言葉は、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

脳全体が萎縮する病気で、根本的な原因は未だ明らかになっていません。
ただし、遺伝・環境・生活習慣等の複数因子が絡み合っていると考えられています。

アルツハイマー型認知症の主な症状

初期症状では、その発現時期を特定できないほどゆっくりと出現し、進行も非常に緩やかです。
最近のことの記憶は失われるものの、遠い過去の出来事は思い出せる場合が多いです。

中期では、着替えができなくなるなどの症状が出て、一部の日常生活動作(食事、着替え、移動、排泄、入浴等)を行うことが難しくなります。

後期には、ほとんどの日常生活動作に介助を要するようになり、身体機能の低下が著しいです。
そのうえ、関節などの屈曲・拘縮が加わり、寝たきり状態になります。

中期の
症状例
  • 迷子になる
  • 買い物を1人でできなくなる
  • 自転車を安全に運転できなくなる 等
後期の
症状例
  • 配偶者や子どもの顔がわからない
  • 家の中でも迷子になる
  • 尿・便失禁 等

アルツハイマー型認知症の方との
コミュニケーション方法

アルツハイマー型認知症を抱える人のなかには、見当識に障害があり、自分自身が今どこで何をしているのか、誰が話し掛けているのか、話している内容は何かが分からず、不安な気持ちになっている場合があります

よって、少しでも彼らの気持ちに寄り添い、不安を解消するためのコミュニケーションが重要です。

そういった時に有効な2つのテクニックを紹介します。
このテクニックは以降で紹介する認知症の方とのコミュニケーションでも有効な手段のため、覚えておくとよいでしょう

傾聴

傾聴とは、とにかくご利用者の話に耳を傾けることを指します。
この場合の「聴く」とは、相手の話す内容に着目するのではなく、背景にある感情まで目を向け、話を聴くことです

話を聴く際には、次の点に注意しましょう。

  • 適度なタイミングでの相づち
  • 話の内容に合わせた表情(嬉しい話ならば嬉しそうな表情)
  • 辻褄の合わない話でも否定せず、とにかく聴く

介護スタッフはご利用者の話に耳を傾け、良い・悪いや、好き・嫌いの判断をせずに、とにかく聴くという姿勢が大切です
また、決して否定せず、寄り添う気持ちを持つことも大切です。

受容

人ならば誰しも、承認欲求(自分を認めて欲しい、他者から認められたいという欲求)があります。
この欲求はご利用者にも当てはまるため、ご利用者の話を聴き、背景にある感情を受け入れていくことが「受容」となります(ただし、自傷他害の恐れがない場合)。

受容によって、ご利用者は承認の欲求が満たされていくのを感じ、認知症の症状による不安な気持ちが軽減されることでしょう

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脳血管性認知症の場合

脳血管性認知症の概要

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害に伴って、現れる認知症です。
ダメージを受けた脳の部位によって症状が異なる点に特徴があります

高血圧をはじめ、糖尿病、心筋梗塞の経験や、狭心症などは脳血管障害の危険因子であり、脳血管性認知症の予防の観点からもその管理は重要です。

脳血管性認知症の主な症状

症状は多種多様で、多くの場合、発症初期にめまいや頭が重い、しびれ、疲れやすいなどの身体症状が出ます。

この認知症の約8割以上の患者に見られるのが、麻痺症状や、すくみ足などの歩行障害、尿失禁等の神経症状です。
精神症状ではうつ状態が多く、妄想や感情失禁、せん妄もよく現れます。

脳血管性認知症の方とのコミュニケーション方法

脳血管性認知症の場合、脳内でダメージを受けていない部位は正常に働くため、その点を見極めることが重要です。

つまり、本人の認知能力・状態(正常な記憶の範囲等)を十分に見定めたうえで、次のような環境づくりや、声掛けをすることが重要だといえるでしょう

  • 明るい部屋で、座り心地の良い椅子を使う
  • スローテンポの口調、声の大きさに注意し笑顔で声をかける
  • ここはどこで、誰が話しかけているのか、何を話そうとしているのか伝える
  • 不安に思っていることは何かを聴き、不安な気持ちに寄り添う
  • 安心感を与えるために、手を握る
  • 肩や背中をさするなどの適度なスキンシップ

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レビー小体型認知症の場合

レビー小体型認知症の概要

欧米では、認知症の原因疾患としてアルツハイマー病に次いで2番目に多い認知症といわれています
特徴としては、進行性の認知機能の障害で、次のような症状が多く見られます。

レビー小体型認知症の主な症状

レビー小体型認知症の患者の多くに、次の症状が見られます。

  • 認知機能の動揺
    頭がはっきりしている時と、そうでない時の差がある
  • 現実的で詳細な内容が繰り返し出現する幻覚
    人物や小動物などが出てきて、その内容は具体的で繰り返す
  • パーキンソン症状
    手足が震える、動きが遅くなる、筋肉の強張り、小刻み歩行等

レビー小体型認知症の方とのコミュニケーション方法

ご本人が訴える幻覚の内容は、具体的なものが多く(虫が群れを成して部屋の奥にいる、壁の奥に人が座っている等)、聞く側が確かめるほどです。

レビー小体型認知症のご利用者とのコミュニケーション場面で重要なのは、決してご利用者の言うことを頭ごなしに否定しないことです
また、虫などの幻覚が現れにくいように、次のような環境を整えてコミュニケーションを取って下さい。

  • 部屋を明るくする
  • カーペットやカーテンの生地を細かいものから、粗いものに変える
  • 言葉は流暢であるため、社会的な会話を心がける(趣味の話題、好きな食べ物等)
  • 適度な距離を保って、話を聞く姿勢を表現する
  • 低く、落ち着いた声で、ゆっくりと、滑舌よく話す

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前頭側頭葉変性症(ピック病)の場合

前頭側頭葉変性症(ピック病)の概要

前頭側頭葉変性症(ピック病)は、40〜60代と比較的若い世代に発症する病気です。
特徴としては、情緒障害・人格障害・異常行動があります

罹患する前は性格が穏やかだったにも関わらず、この認知症になった途端に、とても興奮しやすくなったり、攻撃的になったりするなどの人格障害が見られます。

前頭側頭葉変性症(ピック病)の主な症状

特に、情緒障害(情緒が不安定になるさま)が顕著に現れます。
さっきまで笑っていたら突然泣き出してしまうなど、情緒が不安定になったり、温和だった人が怒りっぽくなったりするなどです。

異常行動としては、窃盗を繰り返す、他人の家に勝手にあがるなど、社会生活を送るうえで逸脱した行動をとるようになります。

症状を正しく理解しておかないと、支える家族・親族の社会的崩壊を引き起こしたり、トラブルが絶えなかったりするため注意が必要です。

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前頭側頭葉変性症(ピック病)の方とのコミュニケーション方法

具体的な症状は、人によって異なるため、まず、その人の症状や特徴を理解することが重要です。

そのうえで、話に辻褄が合わなかったり、言っていることと行動が異なったりしたとしても、決して否定せず、今の状況・感情に寄り添うことで安心させることが大切です。

また、当事者が大きな声を上げている場合、介護スタッフも同調してエキサイトし声を大きくするのは逆効果です。
あくまでも介護職は冷静に対応することが大切です。

まずは冷静に相手の話を聞いて、返答する場合には次の点に注意しましょう。

  • 大きくなりすぎない程度の声の大きさ
  • 高い音域は聞き取りにくいので低い声
  • ゆっくりとしたテンポ
  • 当事者が判断できないようであれば、二者択一の質問

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おわりに|認知症の症状に合わせたコミュニケーションを心がけよう

認知症にはいくつかの種類と様々な症状があります。
認知症の種類・特徴を十分に理解し、その人に合わせたコミュニケーションを取ることで、ご利用者の安心や円滑なコミュニケーションにつながります。

その際に最も大切なのが、相手の立場に立って話を聴く「傾聴」です
相づちを打ったり、適度に頷いたりすることで、共感的に傾聴することに努めましょう。

この記事で紹介した、認知症に合わせたそれぞれのコミュニケーション方法(話し方や聴き方)を介護現場で実践して、認知症高齢者の理解を深めてみて下さい。

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ご利用者全般のコミュニケーション方法について知りたい方はこちら!

介護現場では利用者とのコミュニケーションが大切!
実践で使える技法を紹介

参考サイト

笑和

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。
福祉人材の教育は約20年のキャリアを持ち、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障全般にも精通している。
大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家資格応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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