課題から見えてくる!
介護業界における課題とICT導入の必要性とは?
はじめに
超高齢化社会が進む日本では、高齢者に介護サービスを提供する介護業界の重要性が非常に高まっています。
しかし、介護業界には課題も多く問題視されているのが現状です。
この課題を解決するために効果的だと期待されているのがICTの活用です。
介護業界においてICTはこれから急速に普及することが予想されています。
今回の記事では、介護業界における課題の解説と、ICTがどのように課題解決に役立つのかについて解説していきます。
是非参考にしてみてください。
そもそもICTとは?
ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で「情報通信技術」という意味です。
もう少し簡単に言うと、インターネットを通じて情報・データなどの共有ができる技術のことです。
ICTはすでに私たちの生活の中でたくさん活用されています。
たとえば、SNSが最もわかりやすい例かもしれません。
SNSを使えば、友人や会社の同僚・上司に情報・データなどを簡単に共有することができます。
皆さんが普段よく使うネットショッピングや、カード決済などもICTの例の1つです。
ICTとITは全く別物というわけではなく、ICTの方がより広義な意味を持っています。
ITとは、「Information Technology」の略で「情報技術」という意味なので、言葉の持つ意味からも理解できるのではないでしょうか。
この先の説明では、ICTとITはほとんど同じ意味だと捉え、ICTと表記を統一して解説をしていきます。
介護業界がかかえている課題とは?
介護業界が抱える課題にはいったい何があるのでしょうか?
具体的に解説をしていきます。
低賃金のイメージ
介護職の給与は、大変さのわりに低いという印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
実際、厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇等調査結果」によると、介護職の平均月収は約22万円、ボーナスなどを含めた年収は約350万円。
一方で、国税庁の発表によると、日本で働く社会人の平均年収は約443万円となっており、一般的な平均給与よりも低いという実態がありました。
しかし、近年の高齢化の深刻化により、国は介護職員の人材確保や離職対策のため、介護職員の給与を上げるための施策を打ち出しています。
それにより、給与の引き上げを行う施設も増加。
今後、介護職員の待遇は徐々に改善されていくことが予想されています。
こうした見通しがあるのに低賃金のイメージが今もある理由としては、今がまさに転換期であることと、介護施設の給与の支払い方法があります。
介護施設は基本的に介護サービスを提供する事業者に対して国から支払われる報酬である介護報酬から施設運営に関わる費用や経費、給与を支払います。
これは、介護サービスの種類や内容、要介護度などを考慮して支給されるもので、この報酬には上限があるため、安易に介護職員の給与が増やせず、給与が低くなってしまうこともあるようです。
介護職へのネガティブなイメージを生んでいる「3K」
介護職はやりがいのある仕事である反面、肉体的にも精神的にもきついと言われることがあります。
たとえば、体重のあるご利用者の体を持ち上げたり、入浴のサポートを行ったりと、力が必要な場面が日常的にあります。
また、ご利用者に急に呼ばれたり異変があった際には、急いで駆け付けねばならないことも。
夜間帯のご利用者の身の安全を守るため、夜勤もあります。
ご利用者や施設の状況によっては、夜勤や日勤が突然変わることもあります。
こういった身体的負担や変則的な働き方から、「きつい」と感じる方も少なくはありません。
ご利用者の食事のサポートやおむつ交換、排泄介助も介護職員の仕事になります。
他人の食べこぼしや排泄物等の処理を行うため、「きたない」というイメージを抱かれる方もいらっしゃいます。
ご利用者の中には、精神的不安や認知症の症状で自分の意思に反して周りに暴力を振るったりしてしまう方もいるため、そういった「きけん」もあります。
また、身体の抵抗力が弱くなっている高齢者の方が多くいらっしゃるという職場の特性から、感染症や流行のウイルスの集団感染のリスクもあります。
こういった部分から、「きつい」「きたない」「きけん」の頭文字を取って、介護業界の「3K」と言われ、ネガティブなイメージを生んでいます。
前述した、「給与が低い」という部分を足して「4K」と呼ばれることもあります。
高齢化に伴う介護職員の不足
急速に進む高齢化によって、介護を必要とする人が年々増えてきているため、介護職員が足りなくなってきているという問題が発生しています。
介護職員が足りなくなるということは、当然1人あたりの仕事量も増えます。
1人あたりの作業量が増えると、一つひとつの業務に対してかけられる時間が減るので、提供するサービスの質の低下にもつながります。
また、残業時間なども増え、介護職員の心身の負担が増加し、仕事への満足度も低下してしまう恐れがあります。
ディップ総合研究所の調査によると、介護職に満足していると回答した人は約35%、離職を考えたことがあると回答した人は約80%にも昇ります。
介護職員の不足は、介護職員の仕事への満足度や、ご利用者のサービスへの満足度も低下してしまうため、ものすごく大きな問題と言えるでしょう。
参照:ディップ総合研究所
採用難により需要に対して供給が間に合っていない
介護職員の需要に対して供給が間に合っていないという問題もあります。
先ほどもお伝えした通り、給与や仕事へのネガティブなイメージに加え、介護職員の仕事への満足度が下がりつつあるため、介護職を目指したいという人がなかなか増えないという問題も発生しています。
介護職員の仕事への満足度を改善していかない限り、これから介護職員を目指したい人も増えず、介護業界がどんどん衰退していってしまう恐れがあります。
その一方で、介護を必要とする人はどんどん増えていくため、本当に必要な人が介護のサービスを受けることができなくなるという事態も予測されます。
これはものすごく深刻な問題です。
ICTの導入により介護業界の課題を解決!
先ほど紹介した課題を解決に導いてくれるのがICTの活用です。
ここからはICTがどのようにして課題を解決していくのかを具体的に解説していきます。
ICTの導入により、さまざまな問題が解決し、介護業界の変革へとつながります。
業務の効率性アップと負担軽減
ICTが導入されることにより、業務の効率化と負担軽減が期待できます。
特に介護記録などの事務作業は人間がやると、時間もかかりますしミスも発生しやすいですが、クラウド型介護ソフトなどのICTを導入することで、手作業で作成する時間の短縮、ミスの削減につながります。
これまで書類作成に割いていた時間を別の作業に使えるため、職員の残業や、身体的・精神的な負担の軽減が見込めるでしょう。
スムーズかつ効率的な情報共有の実現
ICTの最大の魅力の一つは情報共有ができることです。
情報・データをスムーズに共有することができます。
たとえば、施設のご利用者の情報をツールに登録しておけば、必要な時にいつでも確認することができます。
また、同じ施設のスタッフ同士だけでなく、離れた場所にある施設の職員などとも速やかに情報を共有することが可能になります。
これまでは必要な情報をメールやFAXなどで送らないと見ることができませんでしたが、同じツールを共有していればいつでも確認することが可能になるのです。
また、チャットやインカムなどのコミュニケーションツールを用いれば、施設内にスタッフが分散している状況でも、全てのスタッフへ呼びかけや、手の離せない状況でもコミュニケーションができるため、格段に情報共有の効率性がアップすることでしょう。
介護サービスの質とやりがいの向上
ICTの活用はサービスの質の向上にもつながります。
上記でも解説した通り、ICTをうまく活用することで「業務の効率性アップと負担軽減」と「スムーズかつ効率的な情報共有」が可能になります。
これにより、より細かく正確な情報・データをもとに、ご利用者のケアやコミュニケーションという介護の本質的な部分にたくさんの時間を割くことができます。
介護職の本質は、介護が必要な方へのきめ細かなケアや人間同士のコミュニケーションであり、これは機械でやり切ることはできません。
機械でやるべきことは機械でやり、人間でないとできないことは人間が行うことで、サービスの質がより高まるのです。
これはサービスを受けるご利用者にとっては満足度につながりますし、介護職員も余裕を持ってサポートに専念できるため、さらなるサポートの質の向上につながります。
直接的なケアや利用者のことを考える時間が増えることで、介護職員のやりがいもさらに増えることでしょう。
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おわりに
高齢化により需要が高まり改革が行われつつある介護業界ですが、依然として多くの課題を抱えているのが現状です。
このままの状態では介護職員の需要に供給が追いつかず、ますます一人あたりの業務量が増え、現場の職員の満足度が下がり、離職率も高くなるという悪循環に陥ってしまう恐れがあります。
このような状況を変えるためにも、介護職員が介護を必要な人へのサポートやコミュニケーションに専念できる環境を作り、介護職員の仕事への満足度を高めていく必要があります。
ICTの活用は、業務の効率性を上げたり情報共有を円滑にしたりと、介護施設の労働環境の改善やご利用者へのサービスの質の向上に大きな力を発揮します。
介護職は非常にやりがいのある仕事です。
だからこそ、介護職員の仕事への満足度が上がれば、介護職員の需要に供給が追いつき、さらなる業界の成長へとつながることでしょう。
介護施設の環境を見直す際は、是非ICTの活用も視野に入れてみてください。
【参考資料】
たくま
介護業界を得意とするフリーランスライター。
祖父が介護施設を利用していたため、何とか力になりたいと思ったのがきっかけ。
現在も介護ジャンルの記事を多数執筆中。