【インタビュー】
世界で唯一の「生活支援ロボット」の体験型施設
「ロボテラス」とは?
はじめに
皆さんは「生活支援ロボット」と聞いてどのようなものを思い浮かべますか?
生活支援ロボットとは、 介護が必要な方の自立支援や介護を行う方のサポートをしてくれるロボットのことです。
昨今、少子高齢化により、介護を必要とする人が増える一方で、介護をする人の数が少なくなっています。
そのような中で、介護を必要とする人と介護をする人の双方の助けとなる生活支援ロボットに期待が寄せられています。
今回は、神奈川県藤沢市で「生活支援ロボット」の体験・展示を行う「ロボテラス」の運営を行っている、公益財団法人湘南産業振興財団の秋本英一様にお話しをうかがいました。
左から、株式会社フィールズ 関野保様、ZIPCARE 坂本、公益財団法人湘南産業振興財団 秋本英一様
生活支援ロボットを実際に
見て、触れて、体験できる
「体験型施設ロボテラス」
━ ロボテラスについて教えていただけますでしょうか?
まず、成り立ちから説明すると、県内の(相模原市、平塚市、藤沢市、茅ヶ崎市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、綾瀬市、寒川町、愛川町)の10市2町が2013年2月に国から指定を受けた「さがみロボット産業特区」内で、「生活支援ロボット」の普及・啓発を目的として2014年12月24日に藤沢市辻堂に開設されました(2018年8月1日から公益財団法人湘南産業振興財団)。
ロボットメーカーと協力し、ケガや病気により歩行が困難な方のリハビリをサポートする自立動作支援や、介護従事者の方の負担を軽減する介護・リハビリ部門のロボット、生活に楽しさと潤いをプラスします。
時刻やニュースなど情報も教えてくれるコミュニケーション部門のロボットや、歩行が困難な方や高齢の方の移動を支援する車いすやアシスト付き歩行補助具の移動支援部門のロボット、そしておしゃべりや歌、かわいい表情や仕草で癒しを与えてくれるヒーリングパートナー部門のロボットと、いろいろな「生活支援ロボット」を展示しております。
━ ロボテラスのコンセプトについて教えていただけますでしょうか?
ただ展示するだけでは終わらない「体験型施設」を意識しています。
当初はロボットの知識は全くありませんでしたが、自分たちなりに来場者は何を見たいだろうかと考え選定を行いました。
その際に感じたのが、福祉に関するロボットに対して子供たちに興味を持たせるのは難しいだろうなあということでした。
そこで考え出したのが、ただの展示場にするのではなく、実際にロボットに触れて、体験ができる「体験型施設」にすることでした。
ロボテラスでは、「生活支援ロボットしか置いていません」というキャッチコピーのもと、85種類以上のロボットを、無料で見て、触れて、体験することができます。
受付では、ロボットに関する疑問や質問に詳細にお答えできるようにしています。ただ見るだけではなく、子供から大人まで実際に体験して楽しめる施設になっています。
お子さんを連れてご家族で体験されている様子
今では、近隣の小学校から1クラス単位で見学に来て下さるケースや、民生委員の方がツアーの一環で勉強に来て下さることもあります。
その他にも、福祉業界の方がロボット導入前の体験に来られたり、看護や福祉の学校に通う学生の方もいらっしゃいます。一方で全くの異業種の方が見学にいらっしゃることもあります。
中にはふらっと立ち寄ったという方もいらっしゃいますので、お気軽にお越しいただければ幸いです。
世界で唯一の生活支援ロボットの
比較・体験ができる
施設として
海外からの評価も高い
━ 国外からのお客様もいらっしゃるのでしょうか?
そうですね。中国や韓国、フィンランドなど、海外からのお客様もいらっしゃいます。
当施設を高く評価してくださっていて、2019年11月のビックサイトで行われた、ロボット技術とサービスの専門展示会『ロボテックス』にて、上海のロボット研究所の方から施設の対応がよかったと表彰をいただいたこともありました。
突然館内アナウンスで中国のブースへ呼ばれたのでびっくりしましたが、国外のお客様からも高く評価いただけて嬉しい限りです。
━ 海外からのお客様がいらっしゃるのは意外でした。
実は、一か所の場所で似たような福祉に関するロボットの比較・体験できる場所は世界にここしかないのです。
たとえば、歩行補助具であればロボテラスには5つの違う種類のものを置いています。ほかのロボットも、複数台は違う種類のものを置いて比較・体験ができるようにしています。
それを、海外の方たちはネットで調べてからいらっしゃっているのです。
ロボットで負担軽減を体験できるブース
ロボテラスにて選びぬかれた最新の歩行補助具
来場者数2万人を突破
━ これまでに何人の方がいらっしゃったのでしょうか。
来場者数は、2019年10月11日に1万人を突破。
その後も増えていきましたが、新型コロナウイルスの影響で一時期は停滞。
2023年2月2日に2万人を達成しました。
今後も多くの方にご来場いただきたいと思っています。
企業やメーカー同士をつなぐ架け橋、地域の子供たちが気軽に通える場所を目指して
━ 今後の展望をおしえてください。
今後も世界で唯一の生活支援ロボットの体験型展示場としてロボットや設備をより充実させるとともに、企業やメーカー同士のイノベーションが起きる場所にしたいと考えています。
展示会などで企業やメーカーが一つの場所に集まる機会はあると思いますが、気軽な情報交換や交流というとなかなかむずかしいと思います。
自然と企業やメーカーが集まって、気軽なコミュニケーションや議論から、新たなアイディアやビジネスが生まれるような場にロボテラスがなれたらいいなと考えています。
また、辻堂の子供たちが何年か後に「ああいう施設があったなあ…」と思い出して、友達やその家族に伝え、足を運んでくれたら嬉しいなあと思います。
おわりに
生活支援ロボットを実際に見て、触れて、体験できる、「体験型施設ロボテラス」
今後も世界唯一の生活支援ロボットの比較・体験できる地域の体験型施設として、そして、企業やメーカー間をつなぐ架け橋として発展していくことでしょう。
生活支援ロボットに興味のある方も、そうでない方もぜひ気軽に足を運んでみてください。
- 公益財団法人湘南産業振興財団 ロボテラス
- 〒251-0041
神奈川県藤沢市辻堂神台2-2-1
アイクロス湘南3階
(JR辻堂駅より徒歩4分)
TEL.0466-52-5622
E-mail:roboterrace@cityfujisawa.ne.jp
営業時間:10:00~17:00
※ 休館日は日曜・月曜、祝日、年末年始、その他ご利用できない場合あり。
ロボテラスホームページのカレンダーをご確認ください。
展示場では、株式会社ZIPCAREの「まもる~のONE」も展示いただいております。
「まもる~のONE」は、ご利用者の脈拍・呼吸、睡眠・離床、部屋環境を見える化し、必要な情報をご家族にお知らせする見守り介護ロボットです。
長時間ベッドに戻っていないなどの異変にいち早く気づけるとともに、日々の暮らしぶりが離れていても見えるため安心です。親御さんと離れて暮らしている方、同居しているけれど家を空けるときなどが心配な方は、是非チェックしてみてください。
杉山 貴子
介護ロボットメーカー勤務。カスタマーサクセスを担当。
介護に関するコラム記事を執筆中。