【立ち上がりや歩行に自信がない方向け】
座ったまま手軽にできる!椅子エクササイズ7選
はじめに|椅子エクササイズのすゝめ
ほとんど外出する機会がない、という高齢者の方とお話ししていると、
「立とうと思ってもうまく足に力が入らない…」
「家の中でトイレに行って帰ってくるだけで疲れる…」
「急にふらつくことが増えた…」
といったお悩みをよく聞きます。
このように立ち上がりや歩行に自信がない高齢者の皆さんに筆者がおすすめしたいのが、いつも使っている椅子に座って行う「椅子エクササイズ」です。
立って行う運動や横になって行う運動と比べて、座って行う運動には様々なメリットがあります。
本記事では、気軽にはじめられる7つのエクササイズをご紹介いたしますので、是非普段の生活に取り入れてみてください。
寝たままでもできる
エクササイズはこちら!
寝たままできる!筋力アップエクササイズ7選
椅子エクササイズのメリット
❶ 転びにくい
一番のメリットは、姿勢が安定しているため転びにくいということです。
普段からあまり歩いていない方の場合、立った姿勢での体操はふらついて転んでしまうリスクが高くなりがち。
しっかりと安定した椅子に座っていれば、ふらつきを気にせず、思い切って身体を動かすことができます。
❷ 呼吸が深くできる
息苦しくならずに運動を続けるためには、しっかりと深い呼吸ができることが重要です。
あお向けの状態は姿勢としては安定していますが、肺を包んでいる胸郭の動きがどうしても制限されますので、深い呼吸がしにくくなります。
しかし、身体を起こして座った姿勢をとると、息を吸うメインの筋肉である横隔膜がしっかりとはたらき、胸郭も広がりやすくなるので、より深いスムーズな呼吸をすることができます。
❸ 身体を大きくいろいろな方向に動かせる
寝ている姿勢と比べて、腕や足をいろいろな方向に大きく動かすことができます。座った状態で大きく動かすことで、硬くなりがちな筋肉をほぐすなど、血流をよくして身体を温めることができます。
立っている状態でも大きく動かすことは可能ですが、その代わりにふらついて転んでしまうリスクも高くなりますので、運動習慣があまりない方は座った状態からのスタートがおすすめです。
❹ 様々な目的の運動ができる
椅子を使ったエクササイズでは身体をほぐすストレッチ、筋力をアップする筋力トレーニング、心肺機能を高める有酸素運動といった様々なタイプの運動ができます。ですから、身体の特定の部分を鍛えたい、というよりも全体的に身体の調子を上げていきたい、という方に特におすすめです。
椅子エクササイズはこんな方にぴったり!
今回の記事でご紹介する椅子エクササイズは、家の中はなんとかご自分で歩いて移動できるものの、
「外にでかける体力がない…」
「立っているとふらついて怖い…」
「日中は座ってテレビを見てなんとなく時間が過ぎることが多い…」
という方にぴったりの内容になっています。
椅子エクササイズは立って行う運動と比べると負荷量が低くなるため、ふだんから外出してしっかり歩いている、という方には少し物足りないかもしれません。しかし「天気が悪いので今日は外に出たくない」というような日にご自宅で行う補助的なトレーニングとしても役立ちますので、ぜひ生活の中に気軽に取り入れてみてください。
ではさっそくはじめていきましょう!
- 運動する際の注意点
- これからご紹介するエクササイズに取り組む際には、下記の注意点を必ずご確認ください。
- 医師から運動の制限を受けている方や、治療中の病気がある方は、必ず医師に相談してから行ってください。
- 運動中にめまいや吐き気、動悸、息切れ、気分不快など、身体の不調が出た場合は運動を中止してください。
- 運動後に関節や筋肉の痛み、全身の倦怠感(だるさ)などがないか確認してください。
- 運動に使用する椅子は背もたれがあり、肘掛けがついてないものを使用してください。
(キャスター付きの椅子は避けてください) - 椅子に座っていても、身体を大きく動かしていると転倒や転落の危険性があります。
お部屋の環境を含めて、安全には十分配慮して運動を行いましょう。
椅子エクササイズ【ストレッチ編】
硬くなりやすい筋肉をほぐす運動
まずは椅子エクササイズのストレッチ編です。
ストレッチというと「ふくらはぎなどの筋肉をじわっと伸ばす」イメージを持っている方が多いかもしれません。
実は、ストレッチには「動的ストレッチ」と「静的ストレッチ」の2種類があり、ゆっくり筋肉を伸ばすストレッチは「静的ストレッチ」と呼ばれるものです。 一方の「動的ストレッチ」は、腕をリズムよく振ったり、身体を左右にねじるといった運動を指します。
静的ストレッチは関節の可動性を広げたり、筋肉の柔軟性を高める目的で行いますが、動的ストレッチは筋肉の温度を高くしたり、血流をよくする目的で行います。そのため、筋力トレーニングの前には動的ストレッチで身体をあたためておくことがおすすめです。
ストレッチ編では、肩〜首周りの緊張をほぐす動的ストレッチを3種類ご紹介します。
どのストレッチも20回を1セットとして、一日2−3セットを目安に始めてみてください。
① 肘回しストレッチ
- 両手の指先で肩に触れる
- 肘をリズムよく20回、前に回す
- 反対の後ろ回しも20回行う
POINT
- 肩こりの方に特におすすめの運動です。
肩甲骨を大きく動かすイメージで行うと、肩周りの硬くなった筋肉がほぐれる感覚がわかりやすいと思います。
② 腕上げ下げストレッチ
- 右手のひらを天井に向けるようにして右手を上げ、同時に左手のひらは床に向けるように左手を下げる
- 左右の手を入れ替えて同じ動きをする
- 左右の腕の上げ下ろしをリズムよく20回繰り返す
POINT
- 腕を大きく動かしますので、周りの環境を確認して手をぶつけないように気をつけながら行いましょう。
左右の手を入れ替える際に反動をつけて行っても大丈夫です。
③ 胸開きストレッチ
- 肘を90度に曲げた姿勢で腕を真横に開く
- 肘の角度を変えないように注意しつつ、両手をぴったり閉じる
- 上記の動きをリズムよく20回繰り返す
POINT
- 腕を開くときは、肩甲骨を背骨にぐっと引き寄せるイメージで大きく動かしましょう。
椅子エクササイズ【筋トレ編】
弱くなった筋肉を鍛える運動
次は筋力トレーニング編です。
立つ・歩くといった動作を安定させるためには下半身の大きな筋肉をしっかり刺激することが重要です。
どのトレーニングも反動をつけずに、呼吸を止めずにゆっくりと行うように意識しましょう。
④ 股関節回しエクササイズ(股関節周りの筋肉を鍛える)
- 足を肩幅の広さに開いて座る
- 右足の膝を上げ、5秒かけて膝でゆっくりと円を描いて元に戻す
(内回し10回、外回し10回) - 左足も同様に行う
左右それぞれ20回×3セットを目安に行う
POINT
- 骨盤をまっすぐ立てた姿勢で行うと、股関節周りの筋肉に力が入りやすくなります。
足を上げた時に身体がふらつく方は、上の画像のように椅子の座面を両手で持つようにしましょう。
⑤ 膝のばしエクササイズ(太もも前面の筋肉を鍛える)
- 右膝を5秒かけてゆっくりと伸ばす(つま先は反らす)
- 伸ばしたところで5秒止める
- 5秒かけてゆっくりと下ろす
- 左膝も同様に行う
左右交互に合計20回×2セットを目安に行う
POINT
- 膝を伸ばしたときに、骨盤が後ろに倒れて身体が丸くならないように注意しましょう。
⑥ かかと上げエクササイズ(ふくらはぎの筋肉を鍛える)
- 骨盤を立ててまっすぐ座り、踵を5秒かけて持ち上げる
- 5秒かけて下ろす
20回×2セットを目安に行う
POINT
- 余裕がある方は、膝の上に手を置いておさえるようにすると、よりふくらはぎの筋肉に負荷をかけることができます。
椅子エクササイズ【有酸素運動編】
心肺機能を高める運動
最後は有酸素運動編です。
立つ・歩くといった動作を安定させるには、筋力だけでなく心肺機能や全身の持久力を高めることも重要です。
代表的な有酸素運動としてはウォーキングやジョギング、水泳などが挙げられますが、今回は椅子に座った状態で簡単にできるエクササイズをご紹介します。
⑦ 腕振り足踏みエクササイズ
- 背もたれから背中を離し、身体をまっすぐ伸ばして座る
- 腕を前後に大きく振りながら、リズムよく足踏みする
- 3分間を目安に続ける
POINT
- 「ややきつい」と感じる程度のテンポで行いましょう。
3分はあくまでも目安です。まずは息切れや足の疲れが強くならない時間設定で始めてみましょう。
おわりに|まとめ
今回は家の中で過ごす時間が長く、「立つ・歩く」といった動作に不安がある方向けに、椅子エクササイズを7種類ご紹介しました。
7種類の運動の中に「身体をほぐす」「筋力をつける」「持久力をつける」というスムーズな動作に欠かせない要素が含まれていますので、コツコツと続けることで、身体の変化が感じられると思います。
日々の生活にこうしたエクササイズを取り入れて、心身ともに健康な生活を楽しみましょう!
今回の記事で紹介している情報は、取り上げているエクササイズの効能や有効性を保証するものではありません。
また運動の適切な負荷量については個人差がありますので、ご自身で判断の上で調整しつつ行ってください。
持病があり、どの程度運動してもいいかわからない方は主治医に相談したうえで行ってください。
奥山 和人
理学療法士・パーソナルトレーナー。
「姿勢と動作の専門家」として子育て世代のパパ・ママのコンディショニングや、子どもの運動遊び指導をメインに活動中。
また、機能訓練指導員として介護現場で高齢者のリハビリテーションにも長年関わる。脳科学・心臓リハビリテーションといった豊富な医学的知識を活かした講座・セミナー開催、コラム執筆なども多数。
プライベートでは3児のパパとして子育てに奮闘中。