高齢者の5人に1人が認知症に!?
高齢期にかかりやすい認知症の種類や予防策について知っておこう!

高齢者の5人に1人が認知症に!?  高齢期にかかりやすい認知症の種類や予防策について知っておこう!

はじめに

厚生労働省の発表した『認知症の人の将来推計について 』によると、認知症高齢者の数は2025年には約700万人となると推定されています。

また、近い将来、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になるとも言われています(厚生労働省, 2015年)

認知症は、高齢者の介護と切り離すことのできない問題です。そのため私たちは、自分自身、そして家族のために、老後に向けての経済的な備えを行うと共に、認知症を理解し予防しなければなりません。

十分な備え・予防をするためには、認知症をきちんと理解することがとても重要です。
この記事を読むことで、認知症の症状や特徴などを正しく理解し、予防策や進行を遅らせるための方法を知っておきましょう。

認知症の概要

ここでは、認知症がどのような症状なのか、どのくらいの数がいて、どのような種類があるのかを見ていき、全体的な理解を深めていきましょう。

認知症高齢者の数

厚生労働省が発表した『認知症施策推進大綱 』によると、認知症の人の数は2012年462万人と言われており、軽度認知障害の人の数は約400万人と推定されています。

今後もその数は増えていくものと見込まれており、2025年には約700万人になるだろうという指摘があるほどです。

認知症の定義

そもそも、認知症とはどのような状態を指すのでしょうか。

厚生労働省は、『みんなのメンタルヘルス 』で、認知症を「脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」と定義付けています。

つまり認知症は、加齢等により正常に働いていた脳の機能が低下することで、記憶や思考への影響が見られる病気であるといえます。

認知症の有病率

厚生労働省の『認知症施策推進大綱 』によると、認知症の有病率は次のとおりです。

認知症施策推進大綱:令和元年6月18日
より

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高齢期にかかりやすい認知症の種類

認知症にはいくつかの種類がありますが、ここでは、主に高齢期にかかりやすい認知症の種類を取り上げ、原因や症状について解説します。

認知症施策の総合的な推進について:令和元年6月20日より

① アルツハイマー型認知症

認知症のなかで最も有名な種類だといえます。厚生労働省の『認知症施策の総合的な推進について 』によると、認知症の67.6%を占めます

項目 内容
原因 脳内にたまった異常なたんぱく質により、神経細胞が破壊され、脳の萎縮が起こる。
原因不明だが、遺伝・環境・生活習慣等の複数因子が絡み合っていると考えられている。
特徴 ゆっくりと進行が進むため、早期に発見がしづらい。
症状 昔のことはよく覚えているが、最近のこと(今日の日付・朝ごはんのメニュー等)を忘れてしまう。
軽度の物忘れから徐々に進行し、やがて時間や場所の感覚がなくなり、機能の低下(自立した入浴・排泄が困難等)が見られる。

② 脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られずに、脳細胞が死んでしまい、それに伴って現れる認知症です。全体の19.5%を占めます

項目 内容
原因 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害に伴って現れるため、高血圧をはじめ、糖尿病などの生活習慣病が主な原因。
特徴 脳梗塞が起こった脳の部位によって症状が異なる。
発症初期にめまいや頭が重い、しびれ、疲れやすい等の身体症状が出やすい。
症状 日常生活に支障が出るような記憶障害が現れ、麻痺症状やすくみ足などの歩行障害、尿失禁が出る。
また、うつ状態、妄想や感情失禁(感情のコントロールが難しく、些細なことで怒ったり、泣いたりする)、せん妄が出る。

③ レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは、レビー小体という脳の神経細胞に何らかの影響を与える物質が出現し、結果として神経細胞が徐々に減っていく病気です。全体の4.3%を占めます

項目 内容
原因 レビー小体という特殊なたんぱく質により、脳の神経細胞が破壊される。
特徴 認知機能の動揺(頭がはっきりしている時と、そうでない時の差が激しい)幻視、パーキンソン症状が出る。
症状 現実にはないものが見える幻覚(典型的なものとしては、人物や小動物等)、パーキンソン症状(手足が震える、動きが遅くなる、筋肉の強張り、小刻み歩行等)が出て、転倒のリスクが高まる。

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認知症を予防する方法

年齢とともにかかるリスクが高まる認知症ですが、予防するには一体どうしたらよいのでしょうか。

公益財団法人 健康・体力づくり事業財団の発行する『認知症予防はカラダづくりから』によると、認知症予防のためには、生活習慣の改善・運動や、積極的な社会参加が重要であると指摘しています。

① 糖尿病などの生活習慣病を防ぐ

中高年世代の認知症予防には、糖尿病などの生活習慣病を防ぐことや、食事や運動習慣に気を配った健康的なライフスタイルの実践が大切です。
逆を言えば、生活習慣病のリスクがある人は認知症にかかるリスクも高いといえます。

② 定期的な運動

運動習慣を身に付けることも重要です。1回あたりの時間が短くても、毎日決まった時間に行うことで習慣化させることが大切です。
運動強度は、自分自身が続けられる適切な強さが理想的です。決して無理することなく、慣れてきたら10分以上続けることを心がけてみましょう。

③ 積極的な社会参加

高齢になるとどうしても日中を一人で過ごしたり、対人的な接触機会が減ってしまうものです。閉じこもった生活はやめて、周囲の方と声をかけあって地域活動を担ったり、趣味の会に参加したりするなど、積極的な社会参加を心がけましょう

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認知症の進行を遅らせる方法

もしも認知症になってしまったら、進行を少しでも遅らせるために次の2つの方法が有効的です

  1. 医療的アプローチを充分に行うこと
  2. 生活環境を整える

以下、それぞれを解説します。

① 医学的アプローチ

認知症は早期発見・早期治療が重要だと言われています。
普段の生活のなかで、具体的症状を発見することは難しいのですが、「おかしいな」と少しでも感じたら、病院やクリニック等の「もの忘れ外来」を利用して、状況を相談してみて下さい。

また、専門医の治療を受けたり、専門のお薬を内服することで、認知症の進行を少しでも遅らせるようにしましょう。
認知症リハビリテーション(運動療法、認知機能訓練等)も効果的だと言われています。

② 生活環境の整備

認知症の進行を少しでも遅らせるためには、「ストレスをできるだけ少なくすること」も大事だと言われています。
具体的には、

  • 疎外化しない
  • 孤立させない
  • 本人に過剰な負担を強いない
  • 人格否定をしない

などです。

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おわりに

認知症を予防する、または認知症の進行を遅らせるためには、認知症をきちんと理解し、適切な方法を取ることが重要です。

まずは、認知症予防のために食習慣・生活習慣を改め、発症した場合はもの忘れ外来等の専門科を利用して、早期発見・早期治療を心がけましょう

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【参考資料】

笑和

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。
福祉人材の教育は約20年のキャリアを持ち、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障全般にも精通している。
大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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