在宅介護でお悩みの方必見!
相談窓口や受けられるサービスを解説
はじめに
ある日突然、病気やケガでご家族の介護が必要になった場合、気持ちの準備も整わないまま介護が始まります。
特に在宅介護の場合は、食事、排泄、入浴など身の回りのお世話を介護者が一手に引き受けることに…。介助の中には、力仕事が必要な場面も多くあり、無理を続けると足腰の負担から、膝や腰を痛めてしまいかねません。
介護者が一人で介護を担う状況では、24時間気を張り、精神的にも身体的にも疲労が蓄積してしまいます。
「誰かに相談できないか…?」
「そもそもどこに相談したらよいのか分からない…」
こうした状況を打開するにはどうしたらよいのでしょうか?順を追って解説します。
在宅介護の相談はどこにする?
代表的な相談先として次の3つが挙げられます。
それぞれについて、みていきましょう。
1.ケアマネジャー
ケアマネジャーは、介護・医療・福祉分野の何らかの資格を持ったうえで、実務経験が5年以上あり、試験に合格して資格を取得した専門職です。
ご家族の介護について、身近な人に相談しづらい状況や専門的なアドバイスが必要な時に、相談先としてまずあげられます。利用者の立場に立ち、介護の総合的な支援をする役割を担っています。
ケアマネジャーの所属先は、主に地域包括支援センターと居宅介護支援事業所です。
『地域包括支援センター』は、各市町村の中学校区に1つ設置されており、主任ケアマネ―ジャーの資格を持った専門職員がいます。
地域の高齢者自身からの相談はもちろん、家族からの相談にも対応してくれます。介護の総合相談窓口として初めて相談に行く場所として覚えておくとよいでしょう。相談は基本的に無料です。
ただし、紹介されたサービスを利用するときには費用がかかることもありますので、よく確認しましょう。ケアプラン作成も行いますが、要支援者のケアプラン作成を担当しています。
『居宅介護支援事業所』は、在宅介護の相談窓口として、ケアプラン作成や、介護サービス事業者との連絡や調整を行っています。
所属しているケアマネジャーは、介護認定を受けた要介護者のケアプラン作成にあたります。
ケアマネジャーを探す際は、自治体の福祉課もしくは、地域包括支援センター※で居宅介護支援事業所のリストをもらい選ぶのが一般的です。
※自治体によって名称が異なります。
ケアマネジャーの仕事内容はこちら
地域包括ケアシステムで大きな役割を果たすケアマネジャーの仕事とは?2.自治体の福祉課
住民の生活福祉全般に関わる仕事を担っている部署で、自治体によって名称は違います。
業務は多岐に渡っており、高齢者・障害者、児、子どもと担当部署が分かれています。高齢者に関連した主な業務は介護保険事業に関わるもので、窓口での対面相談、電話相談、公民館等での出張相談等を行っています。
3.民間の無料相談窓口
民間では、社会福祉法人、医療法人、NPO法人、一般企業、ボランティア団体等が、無料の相談窓口を設けています。
たとえば、老人ホームの費用等相談を行っている企業や、介護用品について詳しい団体等があります。各企業や団体の強みも異なりますので、問い合わせ内容により相談窓口を選択しましょう。
負荷を軽減できるサービスを利用しよう
在宅介護において、介護負荷を軽減するために、介護保険サービスを利用するのも一つの方法です。
しかし、介護保険サービスは、要介護認定を受けないと利用できません。なぜなら、日常生活において「できること」と「必要な介助」を認定調査によって判定され、要介護度が決まるからです。では、どのような流れで要介護認定されるのでしょうか?
まず、主治医に健康状態を報告するための意見書を記入してもらい、本人または家族が市町村の窓口(自治体の介護保険担当や地域包括支援センター)で申請をします。
申請後、認定調査員が自宅へ訪問し、介護が必要な本人の状況を調べます。
要介護認定がおりると、1か月程度で、認定結果が記載された介護保険被保険者証が届く流れです。
要介護度は、「要支援1・2」「要介護1~5」の7段階に分かれており、要介護度が上がると支給限度額が増えるシステムです。
要介護度により1か月に使えるサービス利用の上限額が決められています。その上限額の中で介護サービスを利用していきます。
介護保険内で受けられるサービスとは?
ここでは、在宅介護において介護保険で利用できるサービスについてみていきましょう。
1.訪問介護
ホームヘルパー(訪問介護員)が原則1名で自宅に訪問します。
家事代行とは違い、あくまで介護のプロとして身体介護と生活援助の面でサポートします。
身体介護は、食事や入浴、着替え、トイレの介助、ベッドから車いすへの移乗など行います。直接利用者の体に触れて行う身の回りの支援です。
生活援助は、掃除や洗濯、食事の用意、買い物、薬の受け取りなど家事援助的なサービスを行います。ただし、健康な同居家族がいると利用できないケースもあるのでよく確認しましょう。
2.訪問入浴介護
看護師1名と介護職員2名の3名体制で自宅に訪問し、専用浴槽を自宅に持ち込んで入浴介護を行うのが一般的です。
寝たきりなど介護度の高い状態で、自宅の浴室を利用するのが困難な場合に利用されます。入浴前後には、血圧、脈拍や発熱等の確認を行います。
必要に応じて、看護スタッフが床ずれのケアや軟膏塗布等を行い、ご本人の体調の変化にも対処します。
3.デイサービス
介護施設に通って受けられるサービスの一つです。デイサービスセンターや介護福祉施設内で、日中の日常生活の介護や人との交流を目的として利用されています。
施設から自宅まで送迎があり、入浴、食事、排せつなどの日常生活における介助、レクリエーションが提供されます。デイサービスの費用については、事業所の規模や利用時間によって設定されています。
4.ショートステイ
宿泊機能を持つ介護施設に短期間入所して、日常生活にかかわる介護を受けられるサービスです。
例えば、介護者が数日間家を空ける用事のある時や、介護者の休息が必要な場合に利用されています。在宅介護で日々休まずに介護をされている方にとっては、数日でもリフレッシュできる時間は必要なので、選択肢の一つとしておさえておきましょう。
5.介護機器の利用
介護の現場でも、インターネットと物をつなぐIoT機器の導入が進んでいます。例えば、見守り機器。見守りセンサーをベッドに設置することで、夜間の睡眠状態や呼吸、脈拍等の身体の状態、室温などリアルタイムで観察できます。異変があると、察知して素早く通知するので、介護者の夜間介護負荷の軽減にも役立ちます。睡眠や身体の状態データを分析することで、担当ケアマネジャーも把握でき、ケアプランにも活かされます。より良い介護を行う一助にもなりますので、上手にIoT機器も活用しましょう。
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それでもむずかしい場合どうする?
要介護度が高くなり在宅介護が難しいと感じたら、高齢者施設の入居も視野に入れましょう。
地域包括支援センターや担当ケアマネジャーに実際に相談して探すのがおすすめです。高齢者施設には様々な種類がありますが、ここでは介護保険制度の下でサービスを実施している介護型の公的施設についてみてみましょう。
1.介護老人保健施設
入院しての治療は必要ないが、医療ケアやリハビリを必要とする要介護者が入居できる施設。
病院と特別養護老人ホームの中間的な役割を担っています。基本的には、長期の受け入れは行っておらず、3ヶ月程の利用期間で、在宅介護を目指します。要介護認定1~5の人が利用できます。
2.特別養護老人ホーム
自治体や社会福祉法人が運営する施設で、食事、入浴、排せつなどの身の回りの生活介助から看取りまで対応しています。
主に要介護認定3~5で常時介護が必要な65歳以上の人が入居対象です。しかし、低コストで利用できるため施設によっては満床であることが多く、空きが出るまで在宅で待つことが一般的です。可能であれば、1年程度余裕をもって探しましょう。
おわりに
今回は、ご家族の在宅介護が必要になった時に、介護者の負荷を減らすための相談窓口や受けられる介護サービスについて解説してきました。
在宅介護が長期間続くと、身体面、精神面ともに介護者の負担が積もります。ご家族との限られた時間を後悔なく過ごすためにも、他の身内などにも助けを求めたり、必要に応じて介護サービスを取り入れたりできれば、心に余裕をもって介護を行えます。すべて1人で対処しようと思わずに、周りの力も借りてみましょう。
澤 優歌
フリーライター。介護職員・介護福祉士として訪問介護、認知症デイサービス、認知症高齢者グループホームの現場に勤務。
現在は、介護分野を中心にウェブメディアなどで執筆中。