最近よく聞くIT・ICT・IoT・DXの違いって?
介護現場での導入メリットや注意点とは?
この記事ではITや、近年、耳にする機会の増えた「ICT」「IoT」「DX」などの用語、「ブロックチェーン」などのトレンドとなっている技術との関わり、介護現場での導入メリットや注意点について解説します。
はじめに
近年、さまざまな業界で「ITを組み込むことで業務の質を高める」という取り組みが盛んに行われています。
実際に、この取り組みを行なったことで「経営」や「人材育成」などの課題を解決し、効率性を飛躍的に向上させることができた企業や組織は多く存在します。
介護現場に従事されている方の中には、
「ITやICTという言葉はよく聞くけれど、ちがいがよくわからない…」
「業務を自動化できればさらに効率的な業務ができるのに…」
と考える方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では用語の解説からITを業務に組み込むことで得られるメリット、導入する際の注意点までを解説します。
「ITやICTのそれぞれの用語のちがいを知りたい」
「施設のIT化に興味はあるが、どういうものかよくわからない」
という方は、ぜひ参考にしてみてください。
ITとは
ITとは、「Information Technology(情報技術)」の略で、コンピュータやネットワークを用いた技術の総称です。
「IT」と聞くと「高度」、「最先端」といったイメージを抱く方もいらっしゃると思いますが、単に技術や業務にコンピュータが関連しているだけで「IT」と呼ばれることも多いようです。
また、近年では「IT化」という言葉も頻繁に耳にするようになったのではないでしょうか。
これは、紙などの古典的な媒体を使っていた業務を電子化して置き換えることで、効率化を図る取り組みのことです。
具体的な方法は業種や業務によって大きく異なるため、一口に「IT化」として捉えるのではなく、「何」を「どのように」置き換えるかに着目することが重要です。
ITとICT・IoT・DXの違い
ITと同じように、「ICT」や「IoT」、「DX」などの言葉を耳にすることも増えたのではないでしょうか。
これらの用語に対して、「なんだかむずかしくて、はっきりとした違いがわからない」と感じる方も多いと思います。
そこで、ここではそれぞれの意味やITとICT・IoT・DXの違いについて解説します。
ICT
ICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、コンピュータやプリンターなどの機器同士でやり取りを行う技術のことです。
ITとの違いは、コミュニケーションを中心とした技術であるということです。
メールやSNSといったコミュニケーションツールもICTのひとつです。
ITはネットワークの通信そのものに対する技術を指すことが多いですが、ICTは言葉や画像によって、「状況」 「感情」などを表現し円滑に伝えることができる技術や使い方を指します。
これらの特徴を持つICTを活かすことでコミュニケーション能力を増強し、「意思疎通」や「状況の把握」の効率を飛躍的に向上させることが期待できます。
IoT
IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、身近に存在するさまざまなモノがネットワークを通じて情報のやり取りができるようになる仕組みのことです。
ITは通信技術を焦点としていることに対し、IoTはモノの使い方の可能性に焦点を置いています。
身近に存在する「モノ」として、スマートフォンやウェアラブル時計などが有名ですが、近年では家電や車、電車やバスなどの公共交通機関など生活に関わるさまざまなモノにIoTを導入する仕組みが浸透しています。
IoTによって離れた場所から状況を把握することや、機器の操作を行うことも可能になります。
DX
DXとは「Digital Transformation(デジタル変革)」の略で、デジタル技術の活用によってビジネスモデルや業務を新たなものへ変える取り組みのことです。
DXを「古い仕組みのデジタル化」であるIT化と混同している方もいますが、DXはデジタル技術を活用した「変革」そのものを指します。
DXの本質は「変化に迅速に適応するための変革」です。
少子高齢化や景気低迷、インフレの加速など目まぐるしく変化する社会情勢に対して、企業や組織は絶えず変革を実践する必要性が求められています。
DXでは「AI(人工知能)」 「Big Data(ビッグデータ)」 「Cloud(クラウド)、Cyber Security(サイバーセキュリティ)」 「Data Integration(データの統合)」の頭文字を取った「ABCD」が重要であるとされます。
激しい社会の変化に対応するためには、これらの技術を俯瞰した上で有効に活用することが今後ますます求められていくでしょう。
介護現場での導入メリット
ここまでの解説で、IT・ICT・IoT・DXなどの技術や仕組みを介護現場でどのように活用することができるのか、興味を抱いている方も多いのではないでしょうか。
そこで、ここではIT・ICT・IoT・DXの介護現場への導入によって得られるメリットや、導入する意義について解説します。
人手不足の解消
IT・ICT・IoT・DXを業務に活用することで、業務の無駄を減らし生産性の向上を行うことが可能になります。
たとえば、事務作業やカルテの作成など、これまで入力などの手作業に時間がかかっていた業務を自動化することで、職員の負担を大きく減らすことができます。
具体的には、利用者の身につけたウェアラブル機器による生体情報のモニタリングや記録、見守り介護ロボットを用いて睡眠・離床、部屋の環境などの把握を行うことで、介護に要する人員や仕事量の削減などが可能です。
レジリエンスの強化
レジリエンスとは、災害などの未曾有の事態が生じた際、元の業務ができるように復旧する能力のことです。
介護の現場では、健康状態、病歴や服薬情報などの必要な情報を常に把握し続けることが非常に重要です。
こうした情報の紙媒体での管理は、火災や浸水、建物の倒壊などによる損失や紛失の被害を受けやすく、実際に過去の災害では、「紙媒体の喪失によって必要な情報を収集できず適切な介護が難しくなった」という事態も発生しました。
IT・ICT・IoT・DXを活用すれば、こうした情報をオンライン上でリアルタイムに共有することができるようになります。
場所に関わらず介護に必要な情報にアクセスすることができる仕組みを導入することで、たとえ災害などで施設の機能を喪失しても、介護に必要な情報を損失・紛失することはありません。
災害時の要介護者への対応や復旧にかかる時間の短縮を見据え、レジリエンスの強化はより一層重視されるようになるでしょう。
導入するときの注意点
ここでは、介護現場へのIT・ICT・IoT・DXの導入を行う際に注意が必要な点について解説します。
ITリテラシーの強化が必須
導入するIT機器やITシステムを扱う全ての人が、使い方を熟知していることが重要です。
これらを徹底していないと、せっかく機器やシステムを導入してもうまく使いこなすことができなかったり、思わぬ事態を招いてしまうこともあります。
特に、個人情報の漏洩には気をつけなければいけません。
仕組みや留意すべき点を理解できていないまま使うと、意図せず利用者や関係者の個人情報を漏洩させてしまうこともあります。
情報漏洩などのリスクの回避には、研修などによる事前の教育を行うことが一般的です。
また、教育だけでなく、「個人を特定できないように情報を匿名加工してから活用する」といったシステム面からのリテラシー強化も有効です。
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1つのシステムに依存するとシステムダウン時の影響が大きい
業務の運営を単一のシステムのみに頼っていると、利用しているシステムが不具合などで使えなくなった際に大きな打撃を受けてしまいます。
特に、「会計」や「健康管理」など、運用の根幹を担うシステムが使えなくなってしまうと業務に大きな支障が生じます。
そのため、単一の仕組みだけでなく、代替手段の用意も検討が必要です。
また、データの管理では特定のサーバーに情報を集約する「中央集中型管理」が主流ですが、ブロックチェーン技術などの固定のサーバーを必要としない「分散型管理」の活用も進められています。
特に、ブロックチェーンは改ざんや盗聴がほぼ不可能とされ、セキュリティ面においても優れることから新たなデータ管理の方法として大きな期待を集めています。
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IT・ICT・IoT・DXなどの技術や仕組みは日々進歩を続けており、私たちの生活をより豊かにするものとして今や欠かせない存在です。
これらを活用することが、介護の現場においても課題解決の糸口となり得ます。
ただし、専門性が高く導入コストが多大なことも多いため、適材適所に応じた活用ができなければ、せっかく導入しても十分な効果は期待できません。
導入の際は、「とりあえずITシステムを導入すれば効率化できるだろう」と安直に考えず、現場の特性や性質を踏まえて必要な技術や仕組みを導入することが重要です。
ぱすた太郎
現役理系学生Webライター。Webライターとして、IT企業をはじめとした20以上のクライアントのマーケティング支援に携わる。
研究分野は人工知能を用いた生態系の解明。